額装実例集

 アイリス3輪、牡丹1輪が組み合わされたデザインの、エルメスの45cm四方のカレです。
　幾重にもなった花びらの一枚一枚が、線画で繊細に表現されており、上品な色合いでまとまっています。アイリスの花の名前はギリシャ神話の虹の女神に由来があり、牡丹(ピオニー)はパイオニアの語源にもなった医学の神様の名前が語源です。由来を知るとますます心惹かれ、エルメスのスカーフのデザインの奥深さを感じます。
　今回合わせた額には、石造りの素材が自然に晒されて時を経たような、ひび割れ模様が再現されています。ラッピング加工で表情を付けるタイプの額の中でも、独特な雰囲気を持っています。額の色名はホワイトですがアイボリー風の温かみのある色がベースです。
　お預かりしたスカーフの主役の花は、モダンなデザインとして整えられたものでもあるので、シンプルな額も合いますが、時間の経過を表現したこちらの額を組み合わせることによって、生き物としての花を愛おしむ視点に立ち返るかのようです。花の構造をとらえたスケッチの線と、額のデザインであるひび割れ線(凹凸はついていないため、しつこくなりすぎません)との対比も印象的な仕上がりになりました。