額縁には基本的に、アクリルやガラスといった表面カバーが付属します。このページではアクリルとガラスの違いやUVカットについて解説します。
アクリルガラスは、「アクリル樹脂でできた透明の素材」を表す俗称です。
ガラスの代替としてのアクリルを、わかりやすく表現した言葉と言えますが、要はアクリルのことであり、アクリルガラスという物質は明確に定義されていません。
額縁の表面カバー、各種性能比較表
比較項目 |
通常 |
UVカット |
ARアクリル |
オプティアム |
ガラス |
---|---|---|---|---|---|
可視光線透過率 |
93% |
93% |
97-99% |
98% |
90% |
可視光線反射率 |
7% |
7% |
0.81-1.87% |
1.6% |
8% |
紫外線カット率 |
90% |
97-98% |
96% |
99% |
30% |
素材の色味 |
無色透明 |
極薄い黄色 |
極薄い黄色 |
若干青緑色 |
若干緑色 |
最大サイズ |
2060×3180 |
1000×2000 |
550×1300 |
1219×2438 |
400×500位 |
重量・厚さ |
〇(比重1.2) |
〇(比重1.2) |
〇(比重1.2) |
〇(比重1.2) |
×(比重2.5) |
鉛筆硬度 |
△ |
△ |
〇 |
〇 |
◎ |
防汚性 |
× |
× |
〇 |
× |
〇 |
帯電防止 |
× |
× |
× |
〇 |
〇 |
対候性 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
※数字は参考値です。多少の誤差はご容赦ください。
〇 軽い(比重約1.2、ガラスの半分以下の重量)
〇 割れにくくて安全
〇 ガラス以上に透明度が高い
〇 室内紫外線を90%程度カットし日焼けを軽減
! ガラスよりも若干高価
! 強くこすると傷が付く
! 静電気を帯びやすい
! 温度変化でミクロな伸びが生じる
昨今の額縁の表面カバーといえばアクリル。基本的にガラスの上位互換品です。特別な理由がない限り、アクリル付きの額縁を選べば間違いありません。アクリルは経年劣化による変色、変形なども起こりにくい、対候性に優れた素材です。またガラスほどではありませんが、平面性に優れるのでたわみ、ゆがみも気になりません。額縁が大サイズの場合は、3mm厚のアクリルを採用すると良いでしょう。混同されがちですが、ポスターフレームなどに付属する「塩ビ」などとは全くの別物です。
特筆すべきは紫外線(UV)カット効果です。アクリルは素材自体にUVをカットする性質があり、室内紫外線の9割程度をカットできます。紫外線は日焼けなどの劣化を引き起こす美術品の天敵。表面カバーをアクリルにすることで、品物の保存性は格段にアップします。
お客様が最も気にされるのは、傷が付いて曇ってしまうのではないかということだと思います。額縁を普通に飾っているだけで、アクリルに傷が付くことはありません。お掃除の際は、柔らかい布で拭き掃除を行ってください。アクリルが変色して傷付くというイメージは、後述する「塩ビ・PET」と混同されるためです。よほど硬い物でこすらない限り、アクリルが自然に傷付いて曇ることはありません。
弊社の自社工場では、後述するUVカット強化アクリルが標準品となっております。
大量一括発注によりコストカットを実現した、
◯ 基本的な性質は通常アクリルと同様
◯ 紫外線カット率が高い(98%程度)
! 通常アクリルに比べて高価
! UVカットの成分により、ごくわずか黄色い
弊社自社工場は大量一括仕入れによりUVアクリルの低価格化を実現しております
紫外線カット能力を高めたアクリルです。通常アクリルの約90%に対し、約98%の紫外線カット率を誇ります。この10%弱の違いを、大きいと見るか小さいと見るかはお客様次第。
巷ではUVカットを大々的に謳っていることがありますが、アクリルがUVをカットするのは素材自体の性質です。アクリルである以上、紫外線をカットするのは当たり前なのです。具体的な紫外線カット率が、通常アクリルに準じる90%程度なのか、UVカット強化アクリルに準じる98%程度なのか、注意する必要があります。
室内紫外線の100%近くをカットするUVカット強化アクリルですが、それでも額縁の中身の劣化を完全に防げる万能な品物ではありません。表面カバーのケアに加え、直射日光を避ける、温度・湿度の変化を少なくする、紫外線が照射されないLED照明を採用するといった対策も心がけましょう。作品の長期保存を考えた場合、部分的な対策ではなく総合的な対策が大切なのです。
弊社の自社工場ではUVカット強化アクリルが標準品となっております。
大量一括発注によりコストカットを実現したUVカット強化アクリルはこちらからお求めください。(アクリルのみの単品販売)
◯ 傷が付きにくい
◯ アクリルよりも安価
◯ 静電気を帯びにくい
◯ アクリルよりも平面性に優れる
! 重い
! 割れると危険
! 大サイズに使用することは不可能
! いわゆるガラス色である(緑がかった透明)
! 室内紫外線のカット効果は30%程度
めっきり使う機会が減っているのがガラス。大きな額縁の場合、選択肢にも入りません。破損の危険性から、大きな額縁には採用の余地が無いのです。額縁が小さい場合のみ、選択肢としても良いでしょう。額縁の各メーカーも、ガラス付きの額縁は徐々に減らし始めています。
ガラスの使用が好ましいシチュエーションは限られています。品物を強く押さえつけたい場合、お仏壇など汚れやすい場所に飾る場合、(糸状の作品など)静電気の影響を避けたい場合くらいでしょうか。
ガラスとアクリルで迷ったら、アクリルを選択することをおすすめいたします。
※ 配送が困難なため、ガラスの単品販売は行っておりません。
◯ 映り込みをぼかして見えにくくする
◯ 室内紫外線を90%程度カットし、日焼けを軽減
! 高価(通常アクリルの2倍程度)
! 透明度が低い
! 生産中止により入手困難
基本的なメリット・デメリットは、通常アクリルと同様。
蛍光灯などの映り込みを軽減する、低反射加工を施したアクリル。アクリルの表面にエンボス状の凹凸加工を施こしてあります。凹凸が光を乱反射させ、映り込みをぼやかして目立たなくします。また通常アクリルと同じく、90%程度の紫外線カット効果も期待できます。反射をなくす訳ではなく、反射した像をぼやかせる効果になります。エンボス加工により、透明度が下がってしまうことにもご留意ください。反射のない環境なら通常アクリルの方が中身が良く見えます。
また、鑑賞物に密着させることを前提に使用しましょう。額装マット程度の厚さならそれほど気にならないかもしれませんが、鑑賞物から離れるほど、鑑賞物が見えにくくなってしまいます。擦りガラスに似た素材だとイメージすると分かりやすいでしょう。
後述のアンチリフレクション技術を採用したアクリルの出現で、デメリットの多い低反射アクリルは、各メーカーで製造されなくなっています。前時代的な素材と言っても良いかもしれません。
〇 映り込みの激減
〇 透明度(可視光線透過率)が非常に高い
〇 紫外線を96%カット
〇 摩擦に強い
〇 指紋などの汚れが付きにくい
〇 割れにくく安全
! とても高価
! UVカットの成分により、ごくわずかに黄色い
液晶モニターなどにも採用される、ジャパンメイドの高機能アクリル。3ミリ厚のアクリルに光学塗膜の特殊コーティングを施して反射防止(アンチリフレクション)を筆頭に、様々な機能を実現しています。人の目が感知しやすい波長を考慮した[視感度平均]で見ると、可視光線透過率は99%以上、反射率は0.81%と圧倒的な数字を誇ります。
後述のオプティアム・ミュージアム・アクリルと比べると、素材の色味がクリアに近く、より自然な見た目で鑑賞できるのがメリットです。オプティアムアクリルよりはだいぶ安価ですが、やはり高コストが難点。例えば30cm×30cmのサイズの場合、¥8316での販売となります。最大サイズが550×1300ミリという制限もありますのでご注意ください。
〇 映り込みの激減
〇 透明度(可視光線透過率)が非常に高い
〇 紫外線を99%カット
〇 摩擦に強い
〇 帯電防止
〇 割れにくく安全
! とてつもなく高価
! 若干の色味がある(青緑色)
額縁表面カバーの最高峰、オプティアム・ミュージアム・アクリル。アメリカ・トゥルービュー社の特許技術で製作されています。作品の保護、ケアの簡単さなどメリットは数多いですが、映り込み防止コーティングが反射を劇的に減らし、作品に最高の見栄えを提供します。前述のARアクリルも似たような性能を実現していますが、最大サイズが大きいことと、帯電防止機能がメリットとなります。
難点はとてつもなく高価なこと。例えば30cm×30cmの小さなサイズでも、¥44770もの費用が掛かります。効果の程は確かですが、おいそれと手が出せる品物ではありません。将来的なコストダウンが待たれる商品です。
〇 安価
〇 薄いので軽い
!若干透明度に劣る
!薄く、平面性に劣るためたわみなど生じやすい
!紫外線、熱などに弱く変形が起こることがある
価格を重視したポスターフレームなどに採用される表面カバー。塩ビ製、PET樹脂製など若干の種類がありますが、基本的な性質は同じです。価格に優れる反面、デメリットも目立ちます。
透明シートは厚さにバリエーションがあるので注意しましょう。商品によって、0.4mm、0.6mm、1mmとカバーの厚さが異なります。1mm厚ならそれなりに平面性、品物の押さえとしての効果がありますが、0.4mmとなると、シートというよりもフィルムという表現が適しているかもしれません。商品詳細ページに、表面カバーの厚みの記載がありますのでご覧ください。
※ 透明シートの単品販売は行っておりません。
〇 油絵の額装の場合
〇 アクリル画の額装の場合
〇 写真の展示会など、光の反射を取り除きたい
〇 作品をより鑑賞しやすくしたい
〇 大サイズでアクリルの用意ができない
! 汚れ、破損の危険性が高まる
! 紫外線カット効果が無い
基本的には表面カバーを付けるのがおすすめですが、剥き出しで額装する方法もあります。油絵、アクリル画は耐久性が高く、紫外線の影響も少ないため、カバー無しの額装に向きます。作品が汚れた場合も、雑巾などで拭き取ることが可能なため、デメリットが目立ちません。(絵画のクリーニングは専門家の監修で行ってください。)
表面が大きく盛り上がった品物など、あえて前に飛び出させることもあります。こちらの「一角仙人のお面」はまさにその好例ですが、表面カバーの無くなるデメリットは無視して、仕上がりの迫力を重視した結果です。場合によってはカバー無しの額装がより適していることもあるでしょう。特に大サイズともなると、重量、アクリルの価格の問題が大きくなります。品物の状態、予算などと合わせて、カバー無しの額縁もご検討ください。
ちなみに表面カバーを無しにしたい場合、カバーを額縁の裏側に入れると便利です。額縁の構造にもよりますが、基本的に額縁から取り除く必要はありません。裏側に入れておけば、表面カバーを再利用することも容易です。
紫外線とは波長が14~380nm(ナノメーター)以下の不可視光線で、作品に退色(日焼け)や劣化をもたらします。 油絵・アクリル画は比較的影響を受けにくいのですが、水彩画・ポスターなどは紫外線に弱く、簡単に退色が起こります。
そんな美術品の大敵・紫外線ですが、アクリルには素材自体の特性として紫外線を通さずカットする性質があります。
地表での主な紫外線(300~380nmの波長)においてアクリルとガラスを比べると、 ガラスで約30%、通常のアクリルは90%以上、UVカット強化アクリルでは98%以上の紫外線をカットします。UVカット強化アクリルとは、主に美術館などで使用されるアクリルにUVカット加工が施された製品。 通常のアクリルでも大部分の紫外線をカットできるので、こだわりの額装向けのアイテムと言えるでしょう。
アクリルは紫外線をカットする性質とともに、プラスチックの中で最も優れた透明性(反射光7%)や耐候性を誇る製品です。混同されがちですが、安価なポスターフレームに使われる、塩ビシート、PET樹脂のフィルムなどとは根本的に異なります。塩ビやPET樹脂で作られた透明シートは、紫外線・熱等の影響によって変色(黄変)・変形することがままありますが、 よほど過酷な環境でない限り、アクリルに変色や大きな変形は起こりません。
ただし、いくらアクリル等によって額装品を守ろうと、額縁は直射日光や強めの照明を避けて飾りましょう。 100%紫外線をカットすることは不可能ですし、寒暖の差による悪影響、額縁本体の劣化が起こるかもしれません。 紫外線が少ないLED照明を使う、照明をこまめに消すなどの工夫で、額装品を末永くお楽しみいただけることでしょう。
参考URL
http://www.paraglas.jp/comoglas/
https://www.kuraray.co.jp/products/m_sheet
各種アクリルの単品販売も行っております。
アクリル商品の一覧はこちらからご覧ください。