単純そうでお手軽に作れる気がする額縁。実は額縁の手作りは難しくなかなかに困難な道のりです。このページでは、額縁の自作を困難にする数々のハードルをご紹介いたします。
① フレームを斜め45度にカットできない
⇒ 額縁が四角形になりません
② フレームを組み上げられない
⇒ 上に同じく、額縁が四角形になりません
③ フレームかかりを作れない
⇒ ガラスやアクリルを付けることが難しい
④ フレームデザインの自由度がない
⇒ 無骨な仕上がり以外は目指せません
⑤ 品物の観賞価値を高める額縁が作れない
⇒ 大切な品物はプロへの相談をおすすめします
⑥ アクリルなどの部材に思わぬコストが掛かる
⇒ 買った方が安かった。。。なんてことも。
それぞれのハードルについて解説していきます。
額縁の本体(大外のフレーム)は、棒状の4辺で形を成します。この棒状の部材4辺を組み合わせるには、部材を斜め45度にカットしなくてはなりません。この斜め45度のカットが、難度の高いハードルとなります。
結論として、手作業で斜め45度のカットはできません。額縁用の専用の設備(工具ではありません)が必要です。のこぎり補助具を使っても、正確な角度にはなりません。
「自作にクオリティは求めないよ」という方、額縁にとってコーナーのずれは致命的です。ずれた角度を組み上げても、四角形にならないのです。額縁にとっては、ほんの少しの角度のずれでも致命的。たった1度のずれが額縁を大きく歪めます。
まだ額縁が小さいとごまかしもききますが、額縁が大きくなるほどその影響は甚大になります。
四角形でない額縁は役に立ちませんから、ずれを無視して四角形に組み上げるしかありません。コーナーの隙間を補修するため、パテ等を用意しましょう。
繰り返しますが、手作業で斜め45度は実現できません。手作りの額縁では、角はずれるものと思ってください。「45度のカットなんて簡単だよ」などと思っていると、組み上げたときのショックが大きくなります。
斜め45度にカットするのはあきらめましょう
正確な角度が無いと額縁を組み上げるのはとても困難です。ハードル①の通り、フレームは45度にカットできません。実はハードル①の正面から見た45度のカットに加えて、額縁の角にはもう一つ大切な角度があります。
カットした断面が正確な垂直でなくてはならないのです。垂直で無い断面は、3次元の方向に額縁を歪めます。2つの角度がずれた状態で額縁を組むのは困難を極みです。
正確にカットされたフレーム断面にボンドを塗り、突き合わせた角にVネールという金具を打ち込みます。もしくは、ボンドで仮止めして組み上げた後、コーナーに溝を掘ってチキリを埋め込みをします。
いずれの方法も、カット面が正確だということが大前提。角度がずれている以上、「突き合わせる」事ができません。上記以外の方法で額縁を組み上げる必要があります。
角を突き合わせても四角形にならない以上、きっちり角をくっつけて組み上げることはできません。コーナーにできる隙間は無視しつつ、およそで形を整えてながらL字金具で固定しましょう。
突き合わせが難しい以上、断面のボンドは気休めです。L字金具を主とした固定を意識しましょう。できた隙間は木材と同色のパテで補修します。
コーナーの隙間を無視して、がんばって額縁を四角形にしましょう
額縁には表面カバー、中身の品物、マット、裏板などが引っ掛かる部分、フレームかかりが必要です。自作の額縁では、このフレームかかりが作れません。棒状の部材から一部分を均等に切り出せば良いのですが、どう考えても手作業では不可能といえる工程です。
カンナや彫刻刀で行える作業では無いのです。自作の額縁では、フレームかかりが作れません。
フレームかかりが無いと、中身を固定できません。中身とは表面カバー、入れる品物、裏板などの全て。フレームかかりがないと額縁としての体を為さないのです。
例外として、キャンバスやパネルの側面に、フレームかかりの無い枠を取り付ける手があります。表面カバーなどの無い、いわゆる仮縁タイプの額縁です。
昇降板、もしくはそれに準じる設備が必要です。
フレーム材を押し流して、材の余分な部分を切り分けます。工具というよりも「設備」が必要な作業になります。
見た目の悪さはいかんともしがたいですが、
手作業でフレームかかりを作るなら、大小の棒を組み合わせるのが良いかもしれません。
額縁を額縁たらしめる、フレームかかりの製作がとても困難です。
額縁は非常にバリエーションが豊富です。
傾斜の付いた物、丸みを帯びた物、型が付いた物… しかし、自作の額縁は味気ない棒にならざるをえません。単純な棒ゆえの、シンプルな見た目の良さもありますが、自作の額縁にデザイン性を求めるのは無謀です。
ちなみに、フレームの太さは2~3cmにしましょう。細すぎても太すぎても、製作の難易度が上がります。
細身のフレーム、かまぼこ型、山なり外流れ… 額縁デザインのイメージがあっても全て忘れてください。自作の額縁にデザイン性を求めてはいけません。真四角な棒の、無骨さを楽しめることが肝心です。デザインの凝った額縁は、素直に購入しましょう。
額縁の材料は木材以外の選択肢はありません。金属等の額縁は全くもって自作が不可能です。
昇降板、もしくはそれに準じる設備があれば、溝きりや面取り加工を施すことが可能です。直線的なデザインになるのは避けられませんが、ただの四角とは段違いにデザイン性が増します。
自信があるのなら、塗装でカバーする手もあります。自由なカラーリングで可能性が広がることでしょう。
シンプルさに価値を見出せないなら、額縁の自作はやめましょう。
当店の商品カテゴリーを見ると、一般額・油絵額・立体額・写真額・色紙額。実に様々な種類の額縁があります。
額縁の構造は多岐にわたります。入れたい品物に対し、適した額縁の構造があります。それらは品物を無理なく納め、かつその見栄えを高めます。
作品の周りに位置し、広がりと奥行きを与える紙マット。キャンバスなどの厚みがすっぽりと納まる油絵額。作品と表面カバーの密着を防ぐマット材。深さを支えて立体物の額装を可能にする立体額。すっきりとシャープに見せる写真専用の額縁。色紙がはまり、和風の装いを見せる色紙額。
長い歴史の中で、額縁は進化してきました。
こちらのページで説明している内容は、ほぼ紙が入る額縁についての説明になります。最も構造が単純なのは紙が入る額縁ですので、まずは紙1枚の入る額縁の製作を考えましょう。
中身の品物を一生のインテリアとしたいなら、プロの額縁屋に頼ることをおすすめいたします。
中身の鑑賞価値を高めたいなら、プロの額縁屋への相談をおすすめします。
木材とアクリル、ベニヤ板、ネジや釘… 部材単体を見ると非常に安価に思えますが、個別に集めだすと意外とコストが掛かります。特に問題になりやすいのはアクリルでしょうか。アクリル自体の値段が張る上に、良い代替品がありません。
価格重視ならクリアファイルや透明の下敷きも候補の一つです。この際、見た目の悪さには目を瞑りましょう。
・フレーム本体となる木材
・表面カバーとしてアクリルなど
・必要に応じて額装マット
・厚みを調整するダンボールシートなど
・裏板となるベニヤ板、裏板を留めるトンボ金具など
・吊り下げるための、吊金具と紐など
・製作に必要な木ネジ、釘など
額縁の製作にちょうど良い分量での購入は困難です。えてして余剰な部材も購入することになるでしょう。なるべく代替品や手持ちで済ませたいところです。
正直な話、部材の良し悪しはあまり仕上がりに響きません。前述の通り、どうやっても無骨な仕上がりになります。とりあえず額縁の形にすることに重きを置きましょう。
ゴールは一つ、無骨な仕上がりです。とことん材料を切り詰めましょう。
単純そうに見える額縁ですが、額縁の製作は極めて難しい。ちょっと片手間にといった意識では、額縁の形にすることすら困難です。無骨で構造のシンプルな額縁を作り上げるだけでも、日曜大工の技術が中級以上に属する方、設備も含めて準備のある方がしっかりと向き合って作業しなくてはなりません。
コストを下げたい、とりあえず額装したいという方こそ、既製品をおすすめいたします。設備や技術が整っているならば、額縁を骨のある相手として楽しみましょう。
「自作の額縁に自分の作品を飾る」。
作家の夢の一つと言ってもいいかもしれません。
創作活動に額縁の製作も加われば、「作品×額縁」、表現の幅は無限に拡大することでしょう。