額装実例集

 中国の刺繍絵画の額装です。中国の絵画類は、布地をベースとした刺繍、紙をベースとした書画に関わらず、作品本紙の周りに布地貼りの化粧が施されていることが多いです。日本で言うところの、掛け軸のような仕立てを想像してください。
　内戦の不安が付きまとっていた中国では、個人の財産である美術品を守るため、自然と持ち運びのしやすい飾り方が進化しました。いざ戦火に巻き込まれたとき、荷物にならないことが重要だったのです。
　持ち運びのメリットと引き換えに、飾ったときの見栄えはあまり良くありません。特に横長の作品の場合、壁に飾ると中央部分が下に垂れ下がってしまいます。縦長で軸棒の付いた掛け軸なら、重力でまっすぐの見た目が維持されますが、横長の作品を支えなく飾るのは、軸棒が付いていてもなかなか無理があります。また作品が剥き出しであるため、作品の保存効果もほぼありません。
　現代社会で中国絵画を飾るなら、やはり額縁に入れるのが良いでしょう。作品周囲に施された布地を生かしつつ、全体を裏板パネルに張り込むのがベストです。軸棒が付いている場合は、カットして取り除くのが基本。軸棒を残しつつ布地を張り込むことはできないので、軸棒を残すと「中央の垂れ下がり」が起こってしまいます。基本的に作品部分のみが本体で、周りの布地や軸棒は作品の見栄えを高める化粧です。より美しく鑑賞できるなら、化粧部分の調整を躊躇するべきではありません。