額装実例集

 30年以上前に中国上海で購入した刺繍絵画。シルク地に刺繍された、お祭りの風景です。作品の性質上、ベースとなるシルク地に皺やたるみが見られます。作品の周囲を飾る柄物の布地を取り外してから、シルク地を裏打ちして皺やたるみを正しました。
　裏打ち作業でシルク地を伸ばしつつ紙を裏張りしていますが、それでも皺が見られる箇所があります。刺繍の糸がベースの布地を引っ張っている箇所は、物理的に皺を伸ばすことが不可能なのです。細やかな刺繍が施されている分、伸ばしようの無い皺やたるみが生じるのは避けられません。刺繍の糸を取り除けば皺は取れますが、刺繍糸を取ることは作品を壊してしまうことに他なりません。
　特に中国の刺繍作品に見られるのですが、刺繍糸の色落ちに注意しましょう。刺繍糸の中には、水溶性の染色が施された糸があるようです。洗濯をした際に一部の糸の色が流れ、全体を染めてしまうことがあります。裏打ち作業においても、刺繍糸の色落ちが起きないよう細心の注意が必要です。