保存額装について 額縁を最高の保存ケースに
紙が劣化する要因を特定し、その要因を排除・抑制する構成材を採用することで、
作品の劣化を最小限にとどめる、[保存額装]が実現できます。
額縁を、保存を兼ねたショウケースに昇華させましょう。
額縁本体について
構成材の優先順位は?
[表面カバーのアクリル]で紫外線による劣化を防ぐ
紫外線と赤外線の影響
光に含まれる紫外線や赤外線は紙に悪影響を与えます。特に影響が大きいのが紫外線(UV)で、紙の強度を下げる、変色させるといった被害を及ぼします。さらに作品にリグニンが含まれる場合、リグニンと紫外線が反応して悪影響が大きくなります。赤外線は寒暖差を生み出して紙の劣化を早めますが、紫外線に比べると影響は限定されます。
保存額装において、影響の大きい紫外線をいかに抑えるかがポイントになります。
アクリルで紫外線をカットする
表面カバーにアクリルを採用すると、紫外線を遮断することが可能です。アクリルは素材自体の性質で紫外線を遮断するので、紫外線カットが明記されていないアクリルでも、90%程度の紫外線カット効果が期待できます。
さらに保存額装では、97-98%の紫外線をカットする[UVカット強化アクリル]の採用がおすすめです。非常にコストはかかりますが、99%の紫外線カットに加えて映り込みの軽減も兼ね備えた[ミュージアムアクリル]も存在します。一般的なガラスは紫外線カット率が30%程度と低く、紫外線のカット効果は見込めません。
紫外線から額縁を遠ざける
アクリルは紫外線のほとんどをカットできますが、完全に遮断することはできません。またアクリルには赤外線をカットする性質はありません。
美術館などでは、ボタンを押した数分間だけ照明が点灯するなど、光の量自体を制限していることがあります。一般家庭では、まず直射日光を避けて飾ることが肝要です。また、蛍光灯などからも紫外線は発生しますが、LED照明には紫外線がほとんど含まれないため、照明器具を見直してみても良いでしょう。
UVカットアクリル等の
お求めはこちらから 性能比較表など
表面カバーの詳細解説
[額装マット]で作品の裏表を保護する
作品との接触物質による悪影響
紙は接触する物質の影響で劣化する場合があります。
表面カバーと作品が接触する場合、顔料が表面カバーと癒着したり、表面カバーの内側に生じた結露が作品に付いてしまうといったトラブルが考えられます。
作品の裏側は、粗悪な厚み調整材や、裏板ベニヤから発生した有害物質の影響を受ける可能性があります。
これら作品に悪影響を与える物質と、作品を接触させないように配慮しましょう。
額装マットで作品を挟み込む
マットは中性域に調整されていて、黄ばみの原因となるリグニンや劣化の原因となる酸を含みません。マットで作品を挟むことで、有害物質を遮断して保存性を高めることが可能です。また良質なパルプを主原料とするマットは、有害物質の吸着や額縁内部の湿度調整も期待できます。
ちなみに裏表の額装マットを、専用のテープで繋ぎ合わせたものを[ブックマット]と呼びます。ブックマットは、額縁から作品を外して保管するのに便利ですが、額縁に入れるなら繋ぎ合わせる必要はありません。
額装マットの
お求めはこちらから 額装マットとは?
額装マットの詳細解説
[ガスQ]で額縁内の汚染ガスを吸着する
空気環境に含まれる有害物質
空気中に含まれる微量の有害物質や、額縁を構成する部材から発生するVOCs(揮発性有機化合物)が、額縁内部の空気環境を汚染し、作品にダメージを及ぼす可能性があります。
保存額装において、有害物質から守るよりも、有害物質自体を発生させないことが大切なのは言うまでもありません。しかし、VOCsは作品そのもの(塗料など)から発生することも考えられます。
gasQ(ガスキュウ)の
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紙の酸化を抑制する、無害の[厚み調整材]
ダンボールに含まれる有害物質
厚み調整材は主に発泡スチロールやダンボールが使われます。発泡スチロールは作品に悪影響を与えませんが、ダンボールは作品に悪影響を及ぼす可能性があります。
ダンボールは酸やリグニンを含む再生紙であることが多く、額縁の内部環境を酸性に傾けたり、また黄ばみの原因となるリグニンが作品に移る恐れがあります。
作品と厚み調整材の間に背景マットや中性紙を挟んで影響を防ぎましょう。さらに作品側に位置する厚み調整材として、アーカイバルボードを採用すれば万全です。
紙の酸化を抑制するアーカイバルボード
厚み調整材には、保存額装用の無酸ダンボール、[アーカイバルボード]を使うのが最善です。弱アルカリ性に調整されたアーカイバルボードは、紙中の無機酸や有機酸を中和して加水分解などの紙の劣化を抑制します。額縁の内部深さに合わせて、発泡スチロールと組み合わせて使うと良いでしょう。
なお、写真・シルク・ウール・染色など、アルカリ性に弱い物質もあります。同じ額縁内に使っても影響はありませんが、直接触れ合うことは避けてください。
アーカイバルボードの
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[スーパーバリアシート]で外部環境の影響を軽減する
湿度・温度による影響
紙は湿気を吸うと伸び、湿気を失うと縮まる性質があります。この収縮が繰り返されると、紙の含有水分量が徐々に低下し、繊維にしなやかさがなくなって崩れてしまいます。また作品が表面カバー等で強く押さえつけられていると、伸び縮みした時の力が逃げられずに、皺やたるみに繋がる場合があります。
温度の変化は直接的に紙に影響はしませんが、温度が上がれば湿度は下がり、温度が下がれば湿度が上がるというように、間接的な湿度の変化をもたらします。
湿度の変化から作品を守るには
[スーパーバリアシート]は吸湿しないため、湿度が額縁内部に向かう透湿を防ぎ、額縁内部の湿度変化をなだらかにします。ただし、急激な変化をゼロにできるほどの効果はありません。まずは額縁を飾る環境を整えましょう。
美術館などは空調管理で一定の温度(20-25度)と湿度(50-55%)を実現していますが、一般家庭では現実的ではありません。直射日光を避ける、冷暖房が直接影響する場所に飾らない、脱衣所などに飾らないといった対応が第一です。
有害物質を遮断するバリアシート
[スーパーバリアシート]の印刷面は、裏板などから発生するリグニンや酸化物質をブロックします。額縁の内側に向ける白地面は、保存適性に求められる「PAT試験」に合格した素材で、作品に触れても悪影響を与えません。
全く別の機能を持つ印刷面と白地面ですが、双方向への抜けが起こらないので、バリア機能と作品への安全性を両立します。加えて、酸やアルカリ、溶剤にも変化しない安定した物性なので、予期しない事態でも額縁内部への影響を軽減できる可能性があります。
スーパーバリアシートの
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[裏板]から発生する有害物質を防ぐ
額縁内部に発生する有害物質
額縁を構成する木材から、ホルムアルデヒド・ヒノキチオール・有機酸などが発生することが考えられます。これらは作品に悪影響を及ぼす恐れがあります。
特に影響が大きいのが、面で全体を覆う裏板。合板ベニヤから発生するホルムアルデヒドは紙を酸性に傾けて劣化を早めたり、写真の顔料に反応して変色を引き起こす可能性があります。
ちなみに、作品の顔料や基底材(作品本紙)のそのものから、有害物質が発生することも考えられます。
有害物質が発生しない裏板を使う
有害物質を生む材料を避けるのが最善です。前述の有害物質をブロックするバリアシートもありますが、有害物質が存在しないことがベストなのは間違いありません。
裏面全体を覆う裏板は額縁内部に及ぼす影響が大きいため、裏板の素材に注意しましょう。汚れから守るはずの裏板が、有害物質の発生源となっていては目も当てられません。注目の新素材であるPLボードや、表面がコーティングがされたベニヤがあります。
高機能裏板・PLボードの
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保存額装に最適な[額縁本体(フレーム)]は?
額縁の素材は4種類です
額縁本体(フレーム)を作る材料には、木材・MDF・樹脂・金属の4種類があります。フレームの材料で保存性は異なるのでしょうか。
木材から酸やリグニンが放出され、額縁内部に悪影響を及ぼす可能性があります。木材チップと接着剤で作られるMDF材も同じく、保存額装を突き詰めるならこれらのフレームは適さないと言えます。通常の環境において、樹脂製、金属製のフレームが有害物質を放出することはありません。
木地を塞ぐシーリングテープ
剥き出しの木材やMDFを塞ぐのがシーリングテープです。木製やMDFのフレームにこだわり、かつ保存額装を追求する時にお使いください。
全面を覆う裏板などと比べると、辺だけのフレームは影響が少ないと考えられます。木材の枯渇から減少傾向とはいえ、額縁の多くは木製です。デザイン性の高さや加工のし易さは他の追随を許しません。樹脂製や金属製の額縁を選ぶか、木材やMDFをシーリングするか、フレームの影響は少ないと割り切るか、判断に迷うところです。
フレームシーリングテープの
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各種構成材の優先度と額装の補足
保存額装の構成材
| おすすめ度
| ワンポイント
|
UVカットアクリル (表面カバー) |
高 |
劣化の主原因になりやすい、 紫外線から守れるのは表面カバーだけ! |
窓抜きした額装マット (表面カバーとの密着防止) |
高 |
表面カバーと品物の密着は、直接的なダメージに繋がるかも。 ただし、窓抜きマット付きの額装に不向きな品物もある。 |
背景用の額装マット (品物の背面を守る) |
低 |
背面をしっかり支えてくれるが、(薄い物を飾るなら有用度◎) バリアシートやガスQで代用しても悪影響には繋がらない。 |
ガスQ (汚染ガス吸着) |
中 |
汚染ガスの吸着に特化した、独自の機能が光ります。 品物に触れても安全、一度吸着したら再放出も起こらない。 |
アーカイバルボード (酸化の抑制) |
中 |
(上記のガスQも同じく)汚染元を極力排除できれば、 酸化抑制や汚染ガス吸着の必要性は下がると考えられます。 |
バリアシート (外部環境との遮断) |
高 |
外部・背面からの影響を遮断しつつ、品物に触れても安全。 裏板や厚み調整材の問題を一手でカバーする多機能が魅力! |
PLボード (無害のバックボード) |
低 |
(ベニヤ板など)有害なものが無い方が良いのは当然だが、 バリアシートで裏板の影響は遮断できる。 |
「どの構成材を優先したらいいの?」
保存額装の構成部材は種類も多く、それぞれでコストが掛かります。
あくまでも作品や飾る環境次第ですが、あえて優先順位を付けてみました。
繰り返しになりますが、一概に優先順位は決められません。
それぞれの部材の特徴を掴んで、より保存性に優れた額縁を目指しましょう。
また、[品物がどのようにセットされているか]もとても重要な要素です。
例えばセロテープを使った額装では、すぐに黄ばんだ糊が作品に移ってしまいます。
作品に悪影響を与えず、かつ長期的に美しさを保つ額装方法を採用しないといけません。
大切な品物がありましたら、額縁のタカハシにご相談ください。
当店は額装のノウハウ日本一を自負する、工場直営の額縁専門店です。
額縁の製作だけでなく、品物に最適な額装方法をご提案いたします。
マットの裏に作品を固定するテープ
時間の経ったセロテープなど、劣化して固まった接着成分を見たことがある方も多いと思います。テープは作品と直に触れ合うもの。額装に使うテープの品質には、細心の注意を払いましょう。
[フィルモプラスト プラス]はPAT試験合格済みの特殊中性紙の額装専用テープ。接着成分が高品質であることはもちろん、テープ自体が硬くなったり変色することもありません。マットの裏面に作品を固定する他、ブックマットを繋ぐテープとしても最適です。 販売ページ
裏板の固定方法について
裏板の固定方法は、トンボ、総裏、テープ貼り、サルコなどがあります。額縁の裏側を塞ぐ[テープ貼り]がベストなように思えますが、デメリットも多い方法です。
テープ貼りした額縁は、テープを剥がして貼り換えない限り、中身の点検や交換ができません。密閉に近づくほど、カビの発生が促進される場合もあります。よほど塵や埃が積もっているような環境でなければ、裏板の隙間から異物が侵入することもないので、当店では利便性に劣る[テープ貼り]はあまりおすすめしておりません。
リグニンとは?
洋紙の原料となる樹木の繊維を、接着剤のように繋げる働きをしているのがリグニンです。リグニンは光や酸素に触れると変色し、紙を劣化させます。リグニンの含有量は紙の保存性に直結するので、リグニンフリーの紙が徐々に増えています。
ちなみに、手漉き和紙に使われる楮や雁皮などの靭皮繊維はもともとリグニンが少なく、製造工程でリグニンが取り除かれることもあり、洋紙に比べて保存性に優れるのが特長です。
PAT試験とは?
PAT試験(写真保存用包材の写真活性度試験)とは、対象となる素材に温度と圧をかけて強制劣化させ、写真資料に及ぼす影響を測定する試験。[ISO 18916]が取得されている国際規格です。
額縁に飾る品物は写真だけに限りませんが、写真は紙などに比べても化学的に敏感で、劣化しやすいという特徴があります。写真に対しての安全性が保障されているということは、その他の素材に対しても安全性が高いという判断ができます。
送料について
1回のお買い物に対し、上記の送料がかかります。
商品数に関わらず同額で、商品数で加算はされません。
大型配送品について ⇒詳細
大型商品は路線便での配送となります。
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