大迫力のねぷた絵。堂々たる武者絵の額装です。鬼を懲らしめる豪快な武者絵は、ねぷた絵の定番と言って良いのではないでしょうか。
作品の大きさは726×2218、2mを優に超える大作です。これだけの大きさの紙だと、作品に皺やたるみが生じるのは避けられません。画像の右上あたりにも、絵の具の水分が作った紙の皺が、放射線状に広がっているのが見て取れます。
本来、
和紙に付いた皺は裏打ちや張り込みといった作業で正せます。作品本紙に水を染み込ませ、紙全体を水の力で均等に伸ばした後、裏から補強の紙を貼り付けて固定してしまうのです。こうした一連の作業を表具や裏打ちと呼びますが、ねぷた絵にはこの作業が行えません。ねぷた絵に使われる顔料や蝋が水を弾いてしまうので、作品本紙に水を含ませることができないのです。
ねぷた絵は巨大なものが多いため、裏打ちや張り込みをしてピンと伸ばしたいのは山々ですが、ねぷた絵は伸ばすことができない場合がほとんどです。こちらの額装例でも、表面カバーと裏板で作品本紙を挟むだけとしました。若干目に付く皺やたるみも、ねぷた絵の特性として楽しみましょう。
ちなみに、表面カバーと裏板の圧着度合いを強めても、皺やたるみを正すことにはなりません。絵の具が乗った部分と絵の具が乗っていない部分では、そもそも紙の面積が変わってしまっています。皺やたるみを正すには、まず紙全体を均等に伸ばすことが不可欠なのです。圧着度合いを強めても、たるみを潰して折り目を付けることにしかなりません。