歌舞伎の隈取を顔拓にとったのが押隈(おしぐま)。役者が役を終えた後、ヌメ(襦子織りの絹布の一種)に顔を押し付けて型を取った物です。何枚も取れるものではないため、歌舞伎ファンには垂涎のレアアイテム。汗と油で滲んだ押隈からは、その公演の息吹がしとどに感じられます。
押隈は九代目の團十郎が始めたものだといいます。隈取を拭くのが大変だったため、油分を生半紙に吸い取らせようとした所、たまたまきれいに取れた。そこから発展し、現在のヌメに押し当てる形になったようです。押隈は掛け軸として、もしくは額縁に入れて飾ります。こちらの額装例では、ご覧の通り隅丸の和額で額装しました。
ヌメは非常に薄く、そのままでは額縁に飾れません。
裏打ち作業で補強した後、布地の上に張り込みます。背景はすっきりとグレー単色の布地としました。