何やら不気味な怪物がうごめく世界…。見知らぬ星を舞台にしたSF作品の挿絵と言われたら信じてしまいそうです。
木口木版の挿絵を額装しました。木口版画は、印刷技術の向上とともに挿絵の精巧さも求められた、19世紀に発達した版画法で、耐久性のある堅い木材の断面に細かい線を彫りこんで版が作られます。木版画と言われてもにわかには信じがたい精巧さです。
挿絵作者は、ギュスターヴ・ドレ。19世紀に活躍した画家でもあり、版画作家でもあり、出版物を中心に活躍したイラストレーターでもありました。
描かれているのは、地獄に落とされた天使たちを描いたジョン・ミルトンの文学作品『失楽園』のワンシーンとのことです。天使たちが反逆の狼煙を上げる決起の瞬間のように見えますし、わびしい地獄をさまよい歩いているシーンともとれます。地を這う怪物達は神話などに登場するゴルゴン、ヒドラ、キメラ達。この作品の中では黒々と個々の表情がわからないまま描かれており、一層不気味さが増しています。
額装に使用した額は9102墨の規格太子サイズ、焦げ茶寄りの暗色です。縁幅12mmのオーソドックスな木製額です。古風な絵画の雰囲気を壊さずに、
少々色焼けをした作品にあわせ、マットはコアブラウン10197を使いました。作品は直接テープを使わないように、コーナー三角で固定しています。
ジョンミルトンの失楽園は、ルシファー、のちの魔王サタンの堕天をつづった作品ですが、彼らのふるまい、心情が魅力的に描かれています。ダークな世界を覗いてみたい、そんな気持ちをくすぐるアート作品です。