版画のオリジナル性
- 版画とは…
- 版画は油絵や水彩画とともに絵画の表現方法の一つです。
又、油絵や水彩画、版画はそれぞれ独立した絵画形式であり、その芸術的価値においても変わりません。
ただ油絵や水彩画が筆などで『描く』のに対し、版画は版を用いて紙の上に『刷る』という【複数芸術】です。
版画の技法
版画のオリジナル性
- オリジナル版画…
- 作家が版画を制作する目的で下絵を描き、刷られたものであり、他に原画のある複製版画とは厳に区別されなければなりません。
- エスタンプ…
- 複製版画のこと。セカンドリトグラフも同義語。
- 原版…
- 版画は作家自らの手で、あるいは自らの監視下において一枚一枚仕上られる独立した創作品であって複製画ではありません。原版は一定の限定枚数を刷り上げた後、壊すか、傷を入れて増し刷りできないようにします。
- 限定番号…
- 刷り上った作品には、作家が自ら1枚ごとに、一連の作品番号を書き入れます。分母にあたるのが作品の限定数(エディション)で、分子は通し番号を表します。但し、刷り順とは関係なく入れられるため、この番号にこだわるのは無意味といえます。
・E.A(Epreuve d artiste)、A.P(artist proof)、H.C(Hors Commerce)
これらの記号の作品は作家用として制作数の1割程度が同時に制作され、作家の所有となったものです。これは作家の記録のため又は制作に協力した人々へのお礼として使用されております。コレクターが市場で品切れになった作品をどうしても入手したい場合、特に作家に依頼して手持ちのこの記号の作品を分けてもらうこともあります。
- サイン…
- サインの習慣は19世紀ごろ始まったといわれています。 各作品ごとに作家が直筆のサインを鉛筆でします。これは作家が自己の作品として認め、納得した出来ばえであることを是認した証しです。
・ノーサイン
ノーサインの版画で市場にある作品は案外高価な作品が多いです。 なぜなら、ノーサインでも市場性があるのですから、シャガール、ピカソ、そしてオールドマスターの作品等がそれです。しかしそれ以外のノーサインの作品は、やはり作者の承認がないのですから安いものが多いです。
・刷り込みサイン
版上サインとも言われ、サインも版画で刷られているものがあります。複製版画(エスタンプ)に多く見られます。これも作者の承認が作品中にないのですから一般的に価値が低いものです。但し、レンブラントなどのオールドマスター、ミューシャ、ロートレックなどの作品では、時代的にサインの習慣がなかったので版内の刷り込みサインが認められます。
・スタンプサイン・印章
ユトリロ、ローランサン、ピカソ等の作品にみられるスタンプを押したアトリエサインは、作者の死後、遺族等によって押されたもので、自署よりは当然価値は低くみられます。また、油彩などを複製版画にしたエスタンプなどにもスタンプサインが多くみられます。これは一応版権等に承認があったことをも示しているので単なるエスタンプよりは高い価格が付いているようです。日本画の複製版画などには印章が押されている場合が多いですが、これも一種のスタンプサインといえます。
・作家以外のサイン
作家の自筆サインではない場合があります。 これは、多くは作家が既に故人となっている場合で、その家族や著作権所有者、版元の摺師などが入れています。
版画の技法
版画の種別は技法によって表現されるイメージが異なるため多様な広がりを見せています。 日本では伝統的に木版画に代表されていますが、ヨーロッパでは石版画(リトグラフ)、 銅版画(エッチング、メゾチント、ドライポイント)などが主流で、 新しい傾向として孔版画(セリグラフ、シルクスクリーン)技法が盛んに使われてきています。
- リトグラフ…
- 石版画。水と油の反発作用を利用した平版形式の版画です。もともとは天然の石灰石を版材にした版画でしたが、石材の入手困難と取り扱いの不自由さから、最近では亜鉛板やアルミ板などを使うのが一般的になっています。表面がギザギザの擦りガラスに油性クレヨンで絵を描いた状態を想像してください。するとこの描画部分は水拭きしても反発して水は付きませんが、油性のものでしたらクレヨンになじんで付着します。この原理を利用したのがリトグラフなのです。油脂性原材、硝酸ゴム液などを使ったクレヨン、筆、ペンを用い、版に直接絵を描き、インクの付く部分とはじく部分を作って刷り上げます。リトグラフの最大特徴は制作にあたり、版材を彫ったり、腐食させたり、カッティングあるいはブロッキングしたりする技術的な工程から作家が解放されることです。つまりリトグラフは紙に絵を描くのとほとんど同じ感覚で細かい調子の段階も自由にイメージ表現ができるのです。
- エッチング…
- 日本では『銅版画』と総称されています。 普通銅版にニス状にしたアスファルト、ロウなどを薄くひいた面に、針状の用具で絵を描いた後、硝酸に浸して腐食させ凹凸をつくり、凹部にインクを盛って刷り上げます。最も古い技法は版に直接掘り込む方法で、用具によって『ビュラン』、『ドライポイント』があり、手法によって『メゾチント』、『アクアチント』などと呼ばれているものがあります。
- 木版画…
- 彫り残した凸部に顔料を付けて刷り上げる凸版形式の版画。 ヨーロッパでは油性インクを使うのが普通ですが、日本では水性絵具を使い、和紙に染み込ませるようにバレンで刷り上げる手法が古くから行われています。江戸後期に発達した浮世絵版画は多色摺り版画として当時世界最高の技術と美しさであったことは良く知られた事実です。木版画には桜などの木を縦に割った木目のある面に彫版する『板目木版画』、ツゲなど緻密で堅い木を輪切りにした面に油性インクで刷る『木口木版画』があります。ベニヤやリノリウムもよく使われています。
- シルクスクリーン…
- この技法は簡単に言えば、謄写版印刷を大きくしてカラーで刷ったものといえます。木枠に張った絹又はナイロンの上に画像を切り抜いたフィルムを張りつけたり、光化学的に処理した感光剤でインクを通さない膜面を作り、枠内にインクを入れ、スキージーと称するヘラ状のウレタン板で、インクを押し出すように刷り込む技法です。シルクスクリーンは誕生・開発の歴史が浅く、用具・用材も次々と新しいものに改良され、技術的に流動的な点も多く、それだけ未来に多くの可能性を秘めた版種といえるでしょう。 セリグラフと同義語です
- 同一版を使って…
- 同一の版から摺りだされたものでも作品としては別に扱われる版画作品があります。
・色違い作品
まったく同一の版を使いながら、作家が別の効果を求めて異なった色彩で刷り上げた作品。
・用紙違い作品
同一の版から全く同一に摺刷されていながら、用紙の異なっている場合を言います。主に洋紙と和紙の二通りに刷り分けられる場合が多い。
・手彩色作品
モノクロームで摺刷した作品に、色版をかけるのではなく、作家が自らの手で水溶性の絵具を用いて加彩をしたもの。
- アフィシュ…
- 美術展などの開催記念作品として少数部数限定制作された版画ポスターのこと。あるいは自らの版画原版を使用し、リトグラフもしくはシルクスクリーンなどの技法はそのままに摺刷した、非常にオリジナル性の高いポスターのこと。オフセットなどでのポスターとは異なり、原版画の持つ迫力と美しさを持っている。